アルコール依存症と統合失調症の違いをご存知ですか?実は症状がとてもよく似ているんですよ。そのため違いが見分けられず、勘違いしてしまうケースも少なくありません。
もちろんアルコール依存症と統合失調症では原因も治療法も変わってきます。違いを見分けるためにはどこに注目すれば良いのでしょうか。
アルコール依存症と統合失調症の違いはなに?
アルコール依存症は一言で説明するとしたら“薬物依存症”です。いっぱいお酒を飲み過ぎて体に異常が出てしまった、ということですね。
統合失調症は“精神病(脳の病気)”です。精神病と言われていますが、原因は脳にある可能性が高いんですよ。
このような違いがあるにも関わらず、なぜアルコール依存症と統合失調症は似ていると言われているのでしょうか?
今お話した通り、統合失調症は脳の病気です。未だ解明されていない部分も多いのですがドーパミンが異常に分泌されていると考えられています。
実はアルコール依存症もドーパミンに関係しているんですね。薬物依存症の特徴として「また摂取したい!」という気持ちを起こさせるんです。アルコール依存症の場合は「またお酒を飲みたい!なにがなんでも飲みたい!」と思ってしまいます。
こういう気持ちにさせるのがドーパミンなんですね。つまりお酒を飲めば飲むほど飲みたいという欲求が強くなり、その欲求を作り出すドーパミンも分泌されるというわけです。
なるほど、確かにこうして見るとアルコール依存症と統合失調症は「精神病」と「薬物依存症」という違いがあるものの、非常に似ていますね。
アルコール依存症と統合失調症の症状にはどんな違いが?幻覚や幻聴がある?
アルコール依存症と統合失調症にはドーパミンが大きく関係していますが、どちらもまったく異なる病気。症状こそ似ていますが、ちゃんとした違いがあるんですよ。
アルコール依存症の主な症状は、誰もがご存知の通り過剰な飲酒です。朝から夜にかけてまで毎日ずっとお酒を飲み続けている…。それこそ飲んで寝て、飲んで寝て、の繰り返しになるんですね。
お酒がなくなったりお酒を飲んではいけないと言われると、なんとしてでもお酒を飲もうとします。借金をしてお酒を買う、隠れて飲む、お酒を飲むなと言った人に対して攻撃的になる、などです。
「アルコール依存症でも幻覚や幻聴が起こる」と言われていますが、これはお酒を飲んでいない時に起こることが多いですね。もちろん“多い”というだけであって、お酒を飲んでいる最中に幻覚や幻聴を起こす人もいます。
では、どんな内容なのでしょうか。幻覚は「虫がたくさん飛んでいる」「怖い人に襲われている」など、自分にとってつらく苦しいものであることがほとんどです。対して幻聴は「死ね」「避難しろ」など命令をしていることが多いんです。
どちらも自分にとって不愉快なものばかりですね。健常者によくある幻覚や幻聴とはまったく違います。それでは、統合失調症の幻覚と幻聴はどうなのでしょうか?
幻覚・幻聴・妄想と現実の区別がつかなくなり、かつ内容が極めて被害妄想的なのが統合失調症の特徴です。さらに統合失調症の幻聴には種類が多く、複数人が話しかけてきているように聞こえたり命令してきたり物音を聞いたりします。
実際に統合失調症を経験した人によると…。「ナイフで刺せ」「電車に飛び込め」「テレビでお前が笑いものにされているぞ」「お前の部屋には爆弾が仕掛けられているぞ」「これから食事をするんだな」「もう眠るんだな」このような声が聞こえた、と言っていますね。
アルコール依存症の幻覚や幻聴は被害妄想的であっても、シンプル。統合失調症の幻覚や幻聴はかなり被害妄想的で複雑に入り組んでいる、という違いがあります。
アルコール依存症の人が統合失調症になる可能性は?
アルコール依存症と統合失調症の違いを症状だけで区別するのは難しいかもしれません。違いを見分けるポイントになるのは、やはり“お酒を飲む量”でしょう。
そして、気をつけなければいけないのがアルコール依存症の合併症です。統合失調症を併発する可能性があり、他にもさまざまな病気を引き起こすと指摘されています。
その他にはうつ病や不安障害、肝臓や膵臓(すいぞう)がおかしくなってしまうこともあるんですよ。統合失調症の人がお酒に逃げてアルコール依存症になる確率もゼロではありませんから、どちらが先に発症したとしても要注意です。
まとめ
アルコール依存症と統合失調症の幻覚、幻聴は同じではなく、違いがあるんですね。それを見分けるには“お酒に執着しているかどうか”が重要となってくるでしょう。
ただし、違うものだからといって安心してはいけません。併発の可能性がある以上、油断は禁物なんです。
もちろん、どちらの病気も治すことができます。
統合失調症もアルコール依存症も精神科・心療内科で治療を受けられるんです。病院という頼れる存在があるのですから、考え過ぎたり症状が重くなる前に診察を受けましょう。早めに病院で治療を受ければ併発の可能性もグっと減っていきますよ。